絶えることなく立ち上る噴気の中で標高1200mの野天温泉を味わう

日本百名山に数えられる、名峰・安達太良山(あだたらやま)を擁する安達太良連峰。
その最北端に位置する鬼面山(きめんざん)の山腹・標高1200mの高原にある相模屋旅館。
凛と澄んだ高原の温泉で、鬼面山の雄姿に見とれながら浸かるにごり湯は、昔から胃腸、神経痛に効く名湯として愛されてきた本格派だ。

文◎浅川俊文 撮影◎黒田雄一

安達太良連峰の名峰・鬼面山を
眺めながら骨の髄まで温まる

 曲がりくねった山深い峠道を登り、到着した途端、凛と澄んだ空気に心身がきゅっと引き締まった。新野地温泉の一軒宿、「相模屋旅館」は標高1200mの高原に抱かれている。野天風呂の辺りからは噴気が天を目指して立ち上り、温泉力の高さは一目瞭然。源泉は昔から湧出していたが、初代の相模八郎さんが宿を開いたのは60年ほど前。日本百名山に数えられる名峰・安達太良山とその連峰に程近い環境に、山好きの初代は魅了された。以来、野趣あふれる山の温泉宿として相模屋は歴史を刻む。館内の一角には昔の登山道具や山岳系の雑誌も飾られ、登山客にも愛されてきた宿であることを物語る。

 1階には男女の木造内風呂と男性用野天風呂が、2階には女性用野天風呂と男女の木造内風呂が。建物は1989年(平成元)に改築され近代的だが、1階の風呂とそこへ至る長い渡り廊下は、山の宿として歩んできた歴史を忘れないためにわざと昔の風情を残している。いずれの風呂も硫黄泉ならではの匂いと白く濁った湯を源泉で堪能できる。骨の髄(ずい)まで温まるのが硫黄泉の良さ。見上げれば、安達太良連峰の鬼面山がそびえている。「山の温泉なので、ぜひ山を見ていただきたいですね。きっと日本人の中に眠る山岳信仰の心が呼び覚まされますよ」と若き三代目・龍太郎さんが語るのも納得の景観。純白の高峰には聖なる雰囲気が漂っている。三代目が薦めるもう一つの愉しみ方は夜遅くの入浴。静まりかえった漆黒(しっこく)の野天風呂から空を見上げれば、こぼれおちんばかりの星々が輝く。また、夕焼けや朝焼けに染まった高原を眺めながらの入浴も、負けず劣らずの素晴らしさだ。

 夕食となれば、山の幸や郷土料理がずらりと卓の上に並べられる。コイは、生簀(いけす)で泳いでいたものを出す前に絞めるから鮮度抜群。新鮮な地野菜や牛肉、山菜、キノコを使った料理を頬張れば、自然と笑顔がこぼれる。ご主人特製の郷土料理、いかにんじんをかみしめ、会津の地酒で心地よく酔いながら、高原の夜は静かに更けていく。

温泉情報

さがみやりょかん

福島県福島市土湯温泉町字野地2

TEL:0242-64-3624

宿泊料:1泊2食付き1万800円~(平日2名1室の場合の1名料金)

カード:使用不可 客室数:23室

風呂:男女別野天風呂各1、男女別内湯各2

泉質:単純硫黄泉

主な効能:皮膚病、胃腸病、高血圧、動脈硬化、神経痛など

アクセス:(バス)JR東北本線・東北新幹線「福島駅」から送迎バスあり、45分(前日までに予約)。(車)東北自動車道「福島西IC」から国道115号などを経由し45分

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
再編集した、東北観光推進機構と男の隠れ家によるコラボレーション企画です