秋田駒ヶ岳が生む青い湯にリピート客が多い素朴な宿

約20軒の宿で構成される水沢温泉郷。
秋田駒ヶ岳から湧き出た湯は、水沢山荘と水沢温泉のみに使われていたが、今ではこの温泉郷の全ての温泉宿が引くまでに……。
その青みがかったにごり湯は、多くのリピーターに愛されている。

撮影◎渡部健五

体の芯から温まる湯を求めて
常連の連泊客が通う宿

 標高1637mの秋田駒ヶ岳。その懐に大小合わせて20軒ほどの宿が点在している水沢温泉郷。とはいっても温泉街にあるような高層ホテルや飲み屋、土産物屋はここにはない。そんな環境がこの温泉郷に緩やかな空気を作りだしている。
「元湯 水沢山荘」には秋田駒ヶ岳山腹の標高950mで自然湧出する源泉が引かれている。
 1889年(明治22)に見つかった源泉は最初、湯小屋が建てられ使われた。昭和に入ってから宿として創業し、1984年(昭和59)に今の建物に建て替えられた。
 湧出量は毎分約1700ml。あり余る湯は、すぐ近くで同じ経営のもと運営される湯治と日帰り温泉施設「露天風呂 水沢温泉」にも引かれる。こちらは内湯・露天共に、山荘よりも大きな湯船が設けられており、有料だが畳の休憩室もある。
 夕暮れを前に、まずは水沢山荘の内湯を楽しむ。硫黄臭がほんのりと漂う湯は、青みがかり爽やかな印象だ。感触は腕をなでる手が止まるほど肌に湯が吸いつくようで、染み入るのがわかる。竹の注ぎ口から湯船へ流れ出る湯をなめてみると、温泉卵のような風味で旨い。

 内湯でこの宿の湯に体を慣らしたところで露天風呂に入る。露天へは内風呂の奥の扉から出入りする。
 扉を開けて目に飛び込んだのは、雪で化粧された木々。山の湯だと実感する景色の中で、体は冬の秋田の空気に包み込まれた。
 その景色につられて、風呂を囲む岩の向こうを見たくなった。背伸びして眺めると、遠くに雪で囲まれたおぼろげな田沢湖が。日本一深い淡水湖の色は、万年筆のブルーインキを落とした色に例えられる。雪のない季節なら、ここから“田沢湖ブルー”や周辺に広がるブナなどの森の緑が楽しめるのだろう。

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
再編集した、東北観光推進機構と男の隠れ家によるコラボレーション企画です