変色する神秘の湯と千年の湯2つの温泉を伝えた湯守の宿

鳴子温泉は温泉の種類が豊富なことで知られる。
なかでも鳴子を代表する温泉が、
千年の歴史を誇る共同浴場「滝の湯」の白濁した湯と、
江戸時代からの自家源泉「うなぎ湯」の神秘の湯。
泉質も色も違う、2つの温泉を堪能できるのは
代々「湯守」を務めた老舗旅館のこの宿だけである。

文◎阿部文枝 撮影◎遠藤純

毎日色が変わる神秘の自家源泉「うなぎ湯」

 小雨がちらついてきている。冬の鳴子は昼間でも肌寒い。こんな日は鳴子駅前の足湯で温まろうか。
 そう思い、鳴子駅まで歩いてみると、2つある足湯は観光客で満杯だった。並んだ足の間から白い湯気がゆらゆら……。嗚呼、その湯の温かさに触れたい。温泉が恋しい。鳴子の町はそんな季節を迎えていた。
 足湯を諦め、湯の町通りに向かった。緩い坂を上ると、鳴子の象徴である共同浴場「滝の湯」が見えてきた。そこを守るように手前に建つのが「元祖うなぎ湯の宿 ゆさや」だ。1000年以上の歴史がある「滝の湯」の湯守を、寛永9年(1632)から務めてきた。当主は代々遊佐勘左衛門を名乗り、現当主で十七代目だ。

 この宿の長い歴史は、隣の「滝の湯」と自家源泉「うなぎ湯」という、泉質、色の違う2つの温泉の偉大なる湯力が支えてきたと言ってよい。現在は共同源泉の露天風呂を含め3種の温泉が楽しめる。
 到着した早々、大浴場の「うなぎ湯」を覗いてみた。脱衣所からガラス戸越しに見ると、浴槽の湯は黄緑色の透明な温泉だった。その時、女将さんが貸切の露天風呂「茜の湯」が今なら空いていると勧めてくれた。そこでまず旅館の前にある愛宕山へ。森の木々越しに鳴子の町を見下ろす、開放感が抜群の露天風呂だった。湯は無色透明。共同源泉4種ブレンドの硫酸塩泉は肌にまとわりつく、しっとりとした湯だった。共同源泉がこれほど良いなら、「うなぎ湯」はさぞやと期待が膨らんだ。

 浴衣を羽織って宿に戻り、いよいよ本命の温泉へ。ワクワクしながら「うなぎ湯」のガラス戸を開けた。いやはや驚いた。温泉の色がさっきとは違っていた。つい先ほどまで透明だった湯が、濁って湯船の底が見えなくなっていた。色は同じグリーン系。黄色がかった緑色だったのが、緑色が深く濃くなっている。
「神秘の温泉なんですよ。エメラルド色から黒いカラス色まで。間欠気味なので、湯が少ない時、一気にたくさん出る時、毎日色が違います。色が変わる瞬間を目撃したと喜ぶお客さまもいらっしゃいます」
 とは女将の遊佐静子さんの弁。毎年4月の終わり頃に「ライトブルー、グリーン、メタリック」と呼びたくなるような不思議な色になるとか。それも、ぜひ拝見したいものである。

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
再編集した、東北観光推進機構と男の隠れ家によるコラボレーション企画です