蔵王に降る雪に囲まれながら薄青色の強酸性の湯に浮かぶ

蔵王と聞いて思い浮かぶのは、冬の名物・樹氷かスキーか。
いや、もうひとつ忘れてならないのが、そう、温泉だ。
蔵王温泉は日本有数の歴史を持ち、風情ある温泉街がある。
老舗旅館で目にしたのは、鮮やかな美しい色合いの極上温泉だった。

文◎阿部文枝 撮影◎遠藤純

目で皮膚で、五感で味わう
個性的な蔵王の温泉

 蔵王連峰の中腹を目指して、西蔵王高原ラインを登っていく。途中から雪が降り始めてきた。標高900mの蔵王温泉に着くと、温泉街は雪景色の中だった。
 蔵王温泉は西暦110年頃に開湯した、日本で2番目に古い温泉といわれている。幸か不幸か、他にも観光資源が豊富なために、歴史ある温泉にもかかわらず、ややもすれば温泉は忘れられがちの存在であった。それでいいのか、蔵王温泉。温泉ファンとしては、蔵王温泉をもっと知りたい、と思わずにはいられない。そこで、江戸時代から続く老舗の旅館を選んだ。「五感の湯 つるや」。江戸時代中期の1750年頃には、共同浴場「上湯(かみゆ)」の近くで湯治宿を営んでいたという。
 まずは蔵王温泉の湯を堪能したい。この宿には露天風呂付きの大浴場と貸切風呂が4種類あり、それぞれ趣が違う。温泉は全て自家源泉かけ流しという贅沢さだ。

 早速、大浴場へ足を運んだ。大きな浴槽に満々と湯を湛えているのは、淡く青い色を白濁させた、目も覚めるような美しい色の温泉だった。少し、緑色も入っているだろうか。ひと目見てその色合いに感嘆した。これだけ美しい色の温泉はそうそうないだろう。この色は温泉に含まれる硫酸鉄という成分によって生まれるのだという。見た目だけでなく、泉質も非常に特徴的だ。pH1・5の強酸性。これは、かの玉川温泉に次いで全国2位といわれている。
 足からゆっくりと入り、全身を湯に浸すと、湯が肌の表面を荒々しく洗い流して、すべすべにしてくれるような、強烈な感触があった。大浴場は露天風呂にもつながっており、雪景色を見ながらの温泉が楽しめる。少し遠くにスキー場が見え、蔵王にいるのだと実感させてくれる。

降り積もる雪を眺めて浸かれば
蔵王の恵みの湯が一層体に染み渡る

 続いて貸切風呂「木の香の湯」に入ってみる。湯を入れ替えたばかりで、少しだけ青緑色になっていたが、ほとんど透明の湯だった。この湯が時間を経るにしたがって、空気に触れて酸化して白濁してくる。さら湯に体を浸すと、小さな傷がある所にピリピリと痛みが走った。
「新しい湯は成分が濃いから、よく効くんですよ」と教えてくれたのは、二十三代目であり、社長である堀是治さんだ。
「蔵王温泉の湯は、視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚の五感を使って体験していただきたい」と蔵王温泉の魅力を語る。
 色があって匂いがして、特徴がはっきりとしている温泉は、入ったという実感が湧いて満足度が高い、という意見に賛同してくれる温泉ファンも多いのではないか。その意味では、蔵王温泉は目、鼻、その他全身で湯を実感できる、温泉らしい温泉と言えるのだろう。

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
再編集した、東北観光推進機構と男の隠れ家によるコラボレーション企画です