信楽焼の湯船に満ちる薄茶色の源泉と宿自慢の囲炉裏料理を味わう

かつては県内からの湯治客がほとんどだった肘折(ひじおり)温泉だが、温泉ブームによって、その存在は全国的に知られるようになった。
古き湯治場の面影を残す温泉街の佇まいと温泉成分の魅力。注目の秘湯に、温泉と囲炉裏料理が自慢の宿がある。

文◎阿部文枝  撮影◎遠藤純

ウェルカム漬物に宿そば
「旅の収穫は食べ物」

 玄関を入ると囲炉裏があった。かじかんだ手を赤々と熾(おこ)った炭火にかざしていると、女将さんがウェルカム漬物を運んできた。この日は沢庵(たくあん)と青菜(せいさい)漬け。キャラブキもよく出すという。女将さんが自ら漬けた漬物を味わっていると、故郷に帰ったようなほっこりした気分になった。
 肘折という珍しい地名は、老僧が肘を折った時に傷を癒した伝説から命名されたとか。しかし、民俗学者・柳田國男によれば、銅山川がここで大きく曲折しているからだという。真偽はさておき、その銅山川沿いに建つのが「湯宿 元河原湯」だ。
「昔このあたりは銅山川の河原で、河原から温泉が湧き出ていたそうです。以前は源泉が玄関の柱の所から出ていました」
とご主人の横山政志さん。その自家源泉が色付きの温泉というので、早速、貸切風呂「かわら湯」へ向かう。中央に信楽焼(しがらきやき)の楕円形の浴槽がどんと置かれている。湯口から流れ込む湯は自家源泉100%。色は薄い茶褐色で、鉄分が多く含まれているようだ。金気臭(かなけしゅう)もした。

 この日の湯温は39℃だったが、すぐにじわっと温まってきた。出た後には体に爽快感があった。
「それが重曹泉の特徴ですよ。温泉の湯の中に炭酸ガスの気体が入っているので血行が良くなり、湯がぬるくても温まります」
 重曹泉の炭酸ガス効果。覚えておこう。さらに重曹泉は皮膚の表面を軟化させ、老廃物を洗い流してくれるので﹁美肌の湯﹂でもある。温泉の後は囲炉裏料理が待っている。メインの鍋もさることながら、おにぎり、餅などを炭火で「あっちっち」「ほら、焦げちゃうよ」と言いながら焼くのが楽しい。

 そして、締めのそば。「宿そば」と名付けられ名物になっている。地元大蔵村産と自家栽培した最も がみわせ上早生をブレンド。左手が不自由な横山さんが太い麺棒一つで片手打ちする。見た目は黒っぽく粗挽きの田舎そば風だが、打ち方も味わいも洗練されている。ご主人のそば職人としての腕はもっと評価されてよい。
 温泉と食が充実していれば、他に言うことがない。部屋に帰れば炬こ た燵つが用意されている。炬燵に入ってぬくぬくと、しばしまどろみの中に身を置く。こういう時間が冬の温泉宿での最も至福の時であろう。

温泉情報

ゆやど もとかわらゆ

山形県最上郡大蔵村南山454-1

TEL:0233-76-2259

宿泊料:1泊2食付き1万1175円~(平日2名1室の場合の1名料金)

カード:可 客室数:16室

風呂:男女別内湯各1、貸切風呂1(要予約)

泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉

主な効能:切り傷、やけど、慢性皮膚病、神経痛、筋肉痛など

アクセス:(電車)JR山形新幹線「新庄駅」から14時発の無料送迎バスに乗り約45分。(車)山形自動車道「西川IC」で降り、国道112号線経由、国道458号線を通り約1時間20分

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
再編集した、東北観光推進機構と男の隠れ家によるコラボレーション企画です

本内容は、男の隠れ家2015年2月号(2014年12月27日発行)から掲載内容の一部を
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