東北・新潟の酒を学ぶインタビュー

「原料は美味しいし、気候にも恵まれ、酒造りに携わる人たちの技術もしっかりしているのですから、美味しくならないはずがありません。」
酒の鑑定や技術指導に携わり、全国の酒を知る専門家に、東北・新潟の日本酒の楽しみ方をお伺いしました。

仙台国税局 課税第二部 酒類監理官 山脇 幹善

米どころは酒どころ。伝統の高い技術が美味しさの証

 日本酒の原料はお米と水と麹。コメどころである東北・新潟は、いいお米がたくさんとれますし、雪国なのでいい水が豊富にあります。酒造りは冬に行い、「冷やす」という工程がありますので、ある程度の寒さが必要ですが、発酵させるには寒すぎてもいけません。その点東北の冬は、雪が降ると温度も湿度も安定しますので、気象条件にも恵まれています。

 そして酒造りの技術者である杜氏さんの存在です。岩手県には日本最大の杜氏組合である南部杜氏、秋田県には山内杜氏、新潟県には越後杜氏という杜氏組合があります。そこで活発に勉強会を開いて研鑽を重ねたり、先輩がたに相談も出来ますので、技術的な基盤もしっかりしているのです。また県の酒造組合が福島県では清酒アカデミーを、新潟県では清酒学校を開設するなど、杜氏の下で働く人たちの教育もやっています。美味しくなる条件がすべて揃っているのです。

土地の「食」と共に育った地酒の魅力

 東北・新潟の酒は、全体的に言えば「淡麗できれいな、すっきりとした」タイプが多いです。冬の気温が低いので、醪(もろみ)の発酵温度も低めで、じっくりと時間をかけて発酵させます。そうするときれいなすっきりとした味になるんです。

 秋田や福島は香りの華やかなタイプが多く、山形はそれよりもう少し穏やか。青森、宮城は東北のなかでも少し味があるタイプに分類されます。酒の味わいは、肴との関係でお互いが美味しくなるようになっているので、内陸と沿岸部でも変わってきます。東北・新潟に旅行に来たら、地のものを食べて、地の酒を呑むのが一番美味しいんです。旅先でお土産に酒を買って帰って、自分の地元の食材と合わせるとちょっと違うなということがよくあるのですが、その土地のアテで呑むのが一番です。東北・新潟は普通の居酒屋でも地酒がたくさん置いてあるのも特徴ですね。

温度や器で楽しむ、日本酒の繊細な変化とまろやかさ

 冷やの「雪冷え」から、燗の「ぬる燗」「あつ燗」など、日本酒は温度によって味が変わりますので、手軽に日本酒を楽しむには、いろいろな温度での燗がお薦めです。一般的に吟醸のように香りの高いものは冷やして呑めと言われますが、ぬるめに燗をしても美味しいもの、味が変わるものがあって、思いもかけない発見があったりします。燗をつけると酒の味が丸く、まろやかになって呑みやすくなります。 割ってはダメというわけでもないので、原酒などの濃いものにはちゃぽっと1個氷を入れて、氷が溶けていくにつれての味の変化を楽しむのもありだと思います。

 器によっても味わいが変わってきます。陶器の分厚いぐい飲み、磁器のおちょこ、ガラスの器といろいろありますが、一般的にふちが厚いと酒の味がどっしりした感じになりますし、ふちが薄いときれ味がいいように感じます。いろいろな器をコレクションしたり、温度での繊細な変化など、自分好みの味を楽しんでください。